またもスーパーチャンプの偉大を見た 寺地拳四朗、強敵オラスクアガをTKO
昨日は初めて、AmazonPrimeのボクシング配信をライブで見ました。
過去の三度はいずれも会場にいたもので(笑)
まあ、試合前から色々と思うことの多かった興行でしたが...今後、あれこれ書かねばならぬ試合や、あまり書くこともないような試合など、色んなものをいっぺんに見たなあ、というところです。
とりりあえず、メインの感想から。
寺地拳四朗は試合10日前に決まった代理挑戦者、アンソニー・オラスクアガを9回TKO。
皆さんご覧の通りの、凄まじい展開でした。
初回から拳四朗の左ジャブが決まり、コンパクトなワンツーが繋がる。
拳四朗、京口紘人戦と同様のハイペース。意図して、叩きにかかったか。
オラスクアガ、早々に目や鼻の周りが赤くなる。ちょっと気圧された風にも見える。
これは、経験の浅い挑戦者を、拳四朗が打ち込む流れになるか、と思ったが、オラスクアガ踏ん張って、右クロスから反撃。
ジャブを食っても右クロスから入って、右左右左の4連打。そのうち3発までヒット。拳四朗をロープに追う。
体格、ことに上体は拳四朗より確実に大きく、リーチもまさるような。
はっきり、フライ級の体格に見えるオラスクアガ、この後、そのリーチと耐久力、そして闘志で、拳四朗を苦しめます。
2回、拳四朗またジャブからヒットを重ね、右ボディブロー決める。しかし足使ってサークルする拳四朗を追って、オラスクアガの右フックが当たる。
拳四朗ジャブと足で捌き、左右のボディはブロックするが、打ち返す合間に、軽いながら単発のヒットも喫する。
しかしロープを背負った位置からもボディ返し、オラスクアガが自ら下がる場面も。
3回、オラスクアガ果敢に出る。しかし拳四朗、大半をガード、ブロックで受ける。
オラスクアガ、右決めたが直後に拳四朗の左フック、リターン。ノニト・ドネアの「後出しカウンター」を思わせる一撃。
このパンチはさすがに尾を引いたか、オラスクアガ出るが、前にのめって拳四朗の右をカウンターで食い、両手をキャンバスにつく。ダウン。痛い失点。
4回、またオラスクアガ、スタートから出る。しかし拳四朗のワンツー、カウンターで左ボディを食って失速。ラスト1分は後退する場面も。
5回、拳四朗が出て、そろそろ詰めの段階へ進めるか、なんて思っていたら、またオラスクアガが右を返す。
拳四朗、左ボディ入れるが、即座にオラスクアガが左右のボディ連打で返す。
拳四朗、さらにジャブ突いて右、ロープ背負わせて左ボディも。しかし詰め切るとはいかず。
6回、拳四朗少し足使って捌く。それでも右ボディ4発ヒット。
オラスクアガ下がるが、ロープ際から左フックで返し、さらに左右を強振して攻め返す。
拳四朗、ジャブからワンツー当てるが、オラスクアガも右ストレートで追う。パンチの切れ、威力は落ちていない。
7回、両者正対しての打ち合いに突入。右クロス強振、左右ボディの応酬。
間合いをずらしつつ打つ拳四朗、足を踏み換えつつ迫るオラスクアガ。拳四朗右アッパー決め、さらにボディ連発。打ち勝つ。
ここまでクリンチ無しでヒット・アンド・カバーをしていたが、オラスクアガが自らクリンチに。ガードは下がり、足が伸びている。
さらに拳四朗、コーナーに詰めてボディを狙い打ち。オラスクアガ、右アッパーでお返しも、さらにワンツー食ってよろめく。
もうフィニッシュ間近と見えたが、なんとこの回ラスト20秒、打たれたのは拳四朗の方。
オラスクアガ肩で押して、左右ボディ、右アッパー、右クロスで攻める。ちょっと信じられない闘志。
8回、拳四朗、足使ってジャブ、逆ワンツー。解説の村田諒太も言っていたが、京口紘人戦同様、激しい攻防のあとの回を、足と左中心に「リセット」に使う作戦か、と見える。
しかしオラスクアガも攻めて出る。拳四朗のスリップダウンもあり、ひと息つけたか。ラスト15秒から左右を繰り出しラッシュ。
拳四朗の「リセット」は、残念ながら上手く行かなかったか、という印象。
これは終盤に向け、まだもつれるのかな...さすがにきついはずだけど、と思いつつ見始めた、9回でした。
拳四朗が左右のコンビ、ボディブローからワンツー、右クロス。足を前に進めつつ、微妙に「通り道」を変えた右を打ちまくる。
京口戦ほどわかりやすく、クリアに休めたわけではないが、それでもひと息は入れられた、ということだったか。
オラスクアガ返すが食い止められない。コーナー近くで右返すが、相打ちのタイミングでカウンターを食い、これが決定的。
さらに追撃の連打で、遂に崩れ落ちる。
レフェリー、待ちかねたように割って入り、ストップとなりました。
試合後、寺地拳四朗は自コーナーで、そして相手コーナーに挨拶に行ったときも、まだ目に涙を滲ませていました。
それほど激しく、厳しい闘いだったということでしょう。
自分のパンチは数多く、思うように決まっていたが、それに耐えて返してくる相手に、心身ともに揺さぶられていた。
ポイントはおそらくワンサイドに近かったはずですが、数字では測れない「死闘」の内実は、傍目にも見て取れました。
若く、体力闘志ともに旺盛で、確かなフォームと強打、フライ級で充分と見えた体格、そしてそれ故の耐久力を持つ、アンソニー・オラスクアガは、おそらく拳四朗にとり、過去有数の強敵だった。
そして、その闘いに勝利し「生還」した喜びと安堵ゆえに、落涙もあった、のでしょう。
僅かキャリア6戦目の相手に、これほど苦しむなんて、という物言いも、ひょっとしたらあり得るのかもしれません。
しかし今回、我々は、軽量級の歴史に特筆されるスーパーファイトのひとつを、それと知らされぬまま、見ていたのかもしれません。
アンソニー・オラスクアガの今後が、上のクラスにおいて栄光に満ちたものになるか、この試合を境に「暗転」するかは分かりませんが、この試合ひとつを残したことだけでも、彼は大きな敬意の対象であるはず、です。
その激しく、崇高ですらあった闘いの中、寺地拳四朗の偉大さが、リング上に鮮やかに浮かび上がった。
巧みなジャブ、独特のリズムを刻むフットワーク。右クロスや左右ボディブローの後続打は充実し、さらに危険を伴った後出しカウンター、或いは相打ち「気味」ですらない、半ば捨て身の右カウンターをも繰り出す。
好機を得れば、体力の消費を怖れず連打を重ね、その繰り返しの疲弊に、巧みに息を入れることで耐えて、さらに猛攻し、倒す。
これらの「備え」を持つ者、持ちうる者。そのための労苦に耐え、それにより報いられ、勝利という決着を掴み取る者。
まごうことなきスーパーチャンプの姿が、そこにありました。
この日の興行は、試合前から、勝敗予想や内容への期待以外にも、いろいろと思うところが多いものでした。
試合順についてとか、そこから見えてくる、日本ボクシングの現在、現実は...とか。
正直、必ずしも楽しい気持ちになることばかりではなかったですね。
そして実際、5試合を見終えて、それぞれに思うこと、感じることがありました。
しかし今は、何よりも先に、寺地拳四朗の偉大を通じて、ボクシングの凄さが端的に表現され、それを余すところなく見られたことを、嬉しく思っています。
本当に凄い試合でした。これぞボクシング、これぞ真の世界チャンピオン。
寺地拳四朗に拍手を送りたいと思います。
そうそう、AmazonPrimeのボクシング配信興行、この次もあるとしたら、やはりメインイベンターは寺地拳四朗で決まり、で良いですね。
もし、そうならないとしたら、そちらの方が間違っている。そう断じておきます(笑)。