強打を「当て」にせず、生かして闘った 尾川堅一「セカンド・レグ」を僅差で制す





ということで、一昨日はけっこう久しぶりの後楽園ホールにて観戦してきました。
昨年も観戦した、尾川堅一vs内藤律樹の再戦でした。

前回の「ファースト・レグ」の結果を受け、真の決着がつく「セカンド・レグ」と言うべき一戦。
強打の尾川、技巧の内藤、とカラーがはっきりした両者の対戦は、
その構図は変わらずとも、前回とは少し違った展開になりました。



初回、尾川がいきなり仕掛ける。内藤少し下がり気味、ロープに近い位置取りを強いられる。
しかし尾川、焦って出るのではなく、よく見ている印象。いつもより力みが取れている。
内藤徐々にジャブも出すが、やや立ち後れの感。

尾川右ボディ、前回はこのあと上に右が来た。内藤は飛び退く感じでかわす。尾川の回。

2回、尾川頭を動かしながら右、左とヒット。内藤は左出すが浅い。尾川。

尾川は前にのめらず、冷静に当てている。強振せず、当てていく感じ。
パンチのある選手がこういう風に落ち着いて来ると、相手としたら辛いところ。

3回、内藤右ジャブから。4発ほど決まる。尾川はアッパーからリードも、内藤の左ヒット。内藤。

4回、詰めた距離の攻防。尾川、肩当てて出る。ボディ、ジャブの応酬。
内藤のアッパーが入るが、直後尾川の右。内藤ぐらつく。両者効いていないとアピール。
尾川は追撃すべきところだったと見えたが。まさか自分も効いていた?尾川の回。

5回、スリルある攻防。尾川ボディから攻め、内藤は果敢に左を打ち返す。
内藤ヒットは取ったが、同時にフォームが乱れ始める。内藤。

6回、近い距離で打ち合い。尾川左、内藤右フック、左もヒット。軽めだがバッティングが増える。
両者カット、傷は大きくはない模様。やや内藤。

7回、内藤が右フック合わせ、攻勢。左上下、ジャブ、尾川を後退させる。
尾川右返す。内藤左ヒットもやや浅い。もう少し強いヒットで尾川を止めたいが。内藤。


8回、これまでと違い、体力の無駄遣いをしていない尾川が、左右のボディを立て続けにヒット。
内藤も返すが、今度は右ダイレクトを上に。引き寄せてカウンター狙いも。
スリップダウンを挟んでまた右ヒット。攻勢、ヒットとも尾川。

ここまで流れは五分ながら、終盤乱れ、落ちるとしたら尾川の方か、と見ていたが、
尾川がそんなこちらの先入観を覆した回。

9回、尾川、力まず7~8割の感じで右をヒット。強打者ゆえ、これで威力も充分。
的中率もぐっと上がる。内藤左を返し、相打ち気味のヒットもあるが、
本来まさっていなければならない、効率の良さでも尾川に劣っている。尾川。

10回、内藤は厳しい局面、尾川をぎりぎりまで引き寄せて左狙いという風。
しかし尾川の方が良いペース、フォームも崩れていない。
内藤、右フックヒット。尾川ロープに押し込む。内藤なかなか回れない。
尾川ボディを攻める、内藤ブロックするが、反撃ならず。難しいが攻勢で尾川?

判定は三者とも96-94。私はドローか尾川、という感じでした。


終始、非常に内容の濃い攻防で、あっという間の10ラウンズでした。
採点については、自分の見方が絶対とは言えませんが、内藤の勝ちはない、あってもドローまでという印象。

前回のそれとはまた違った趣の展開でしたが、それは尾川堅一の闘いぶりの違いだった、といえます。
相手の出方を見もせず、とにかく手応え欲しい、倒したい、という風だったこれまでの試合ぶりとは違って、
持ち前のスピードと強打を振りかざすのでなく、それを「担保」に使って、試合を回していく、という風でした。

上記したとおり、強打でダメージを与えようとするばかりでなく、力まず当てて、ペースを掴んで、その上で攻める。
「体力の浪費」「低燃費」だった過去と違い、然るべきところに、適切にエネルギーを配した闘いぶりで、
故に終盤になってもフォームの乱れが最小限に抑えられていて、終始続いた緊迫の攻防を、堂々と闘い抜きました。

過去の試合ぶり、前回の試合、その後の防衛戦二試合と比べ、成長の跡がはっきりと見えました。
正直言って予想外で、感心させられました。
松下拳斗(玉越強平)戦の後半に、その兆しは僅かにあったかな、と今になって思いもしますが。


対する前王者、内藤律樹は、これまでと比べて落ちているということは全くなかったですが、
目に見えて成長、変化が見えた尾川の前に、僅差ながら敗れました。
要所で見せたジャブ、左カウンターの鋭さは健在で、インファイトに巻き込まれたという風でもなく、
悪い展開というでもなかったですが、それでも敗れた。

好ファイトでしたし、こちらも堂々たる試合ぶりだったとは思います。
しかし、それ故に、ことに重い一敗かな、とも感じます。
かつて日本上位の好カードを悉く勝ち抜き、日本のトップボクサーとしての理想像を体現した彼だからこそ、
それでもなお、今後への期待は消えてはいませんが...。


それにしても、この一試合はやはり、日本王座というひとつのカテゴリーにおいて、
上位の実力者同士が闘うこその価値を、改めて教えてくれた、そんな試合だったように思います。

先月、神戸と大阪で9つの「タイトルマッチ」を見ましたが、当然ながらその中で、
この試合のグレードに達したものは、ひとつたりとてありませんでした。
同じ次元で比較しうるのはたったひとつ、山本隆寛vsマーク・ジョン・ヤップ戦でしょうが、
技術レベルの話を加えると、やはり...となってしまいます。

ありきたりですが、やはり一流の「本物」は違うのだ、ということでしょう。
尾川堅一と内藤律樹、両者の闘いぶりに拍手します。
実に濃密な、良い試合を見せてもらいました。素晴らしかったです。



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この日の興行は、前座から壮絶な打ち合いや、アーリーKOが続出しました。

昨年の全日本新人王(スーパーフライ級)、強打の若手、梶颯は、えらく痩身のタイ人を初回KO。
なんというか、こんなの早く倒しても自慢にならん、けど長引かせたらもっと無意味、という
いかにもありがちな相手だったのが残念でした。マッチメイクが大変なんだろうなぁ、と推察はしますが。

これまた昨年の全日本新人王(ライトフライ級)、倉敷守安のユーリ阿久井政悟は、
一時世界ランクにも入っていた帝拳のサウスポー、大野兼資と対戦。
阿久井のセンスは素晴らしいが、同時にちょっと物足りない試合ぶりが記憶にあったので、
大丈夫かな、と思っていたら、いきなり鋭く強烈な右クロス一発で大野をダウン。
追撃も正確で、ワンサイドに打ち込む。
葛西裕一がタオル投げてリングに飛び込んできて、早々に試合が終わりました。

正直、これまたビックリの展開と結果でした。50キロ契約だったことも好影響だったのか、
阿久井は伸び伸びと動けていて、パンチの切れと正確さが存分に出た試合でした。
ひょっとしたら、今後は階級上げた方がいいのかもしれませんね。今後が楽しみになってきました。



他の試合も早く終わり、セミ終了がだいたい19時15分くらいだったか。
休憩が入り、当初15分とか言ってましたが、尾川、内藤両陣営ともさすがに予想外の事態だったか、
なかなか準備が出来ないようで、リング上では口ヒゲも凜々しい須藤リングアナが、場内にいる王者たちを紹介したり
(ロマゴンとか、井上兄弟とか、山中とか)、山中慎介カレンダーの宣伝をしたりと苦心惨憺、
色々やってはりましたが、ついにネタも尽き、半ば立ち往生。
しまいに歌でも歌い出すかな、と思っていたら、やっと両者入場の運びになりました。
リングアナというのも大変な仕事やなぁ、と、適当なことを今更ながらに思った次第でありました、ハイ。