大イベントならでは「一段上」のカードふたつ 佐々木尽強烈、阿部麗也はIBF挑戦へ
ということで土曜日の感想文、最後です。
佐々木尽vs小原佳太、WBOアジアパシフィックのタイトルマッチとしては、佐々木が王者、小原が挑戦者ですが、実際は新旧対決で、日本ウェルター級タイトルマッチとして見れば立場は逆、という一戦。
小原佳太が2回に右ショートでダウンを奪うが、佐々木尽はぐいぐい前進して打ちまくる。
3回、左ボディがまともに「刺さった」感じで入り、今度は小原ダウン。
追撃に出る佐々木、小原は捌くことも食い止めることも出来ず、右のクロスを耳の上あたり?に食らって後方へダウン、大の字。
倒れた瞬間にレフェリーがストップを決断したように。想像しうる中で、もっとも強烈なエンディングで「新旧交代」が起こりました。
昨年11月の、中谷正義vs吉野修一郎にも似た構図の一戦でしたが、結果も同じく。
亀海喜寛の後継として、日本のウェルター級最強の男と誰もが認めた小原佳太、その「神話」が終わった、という一戦になりました。
佐々木尽、本当に見事でした。単に勝ち方が強烈だったから、というだけではありません。
例の計量失格事件から「身を落として」しまっても不思議ではないところ、本人の努力、そして周囲の支えもあってのことでしょう、ウェルターに上げ、豊嶋亮太と小原佳太を連破して、己のキャリアを「V字回復」させたことに、改めて拍手したいと思います。
本人、試合後はクロフォードやスペンスの名前を挙げていましたが、さすがにいきなりそういう話にはならんにしても、視界の隅に入るくらいのところには立った、のかもしれません。
ライト級の面々に比べれば、米大陸のリングにおいて、日本のウェルター級ボクサーに対する評価はまだ低いと思われますが、それでもESPNやTwitterなどで、今回のKOシーンはかなり多くの目に触れたのではないかと思います。
実際、Twitterでは試合後、いくつも同じ動画がアップされていました。
これまでは、国内のシーンにおいて、片方が世界ランクの上を見ていて、片方は国内や地域タイトルをKO続きで勝っている、という場合、なかなか直接対決というのは難しく、双方が負うリスクに見合うリターンを得られる場など、どこにもないのが、日本ボクシングの現実でした。
しかしAmazonPrime配信興行は、メインの目玉カードのみならず、アンダーにて通常のメイン級、というに収まらないレベルのカードをいくつか、実現してくれるものであり、その戦いから吉野修一郎という新たな「日本代表」ボクサーがライト級で生まれました。
そして今回、佐々木尽もウェルター級で、同様の地位を掴みました。
出来れば今後も、こういうカードをひとつでも多くの階級で、実現してもらえたら、と思います。
優勝劣敗の掟は余りにも厳しく、残酷なほどですが、それでもなお、その明確さ故に価値ある闘いそのもの、そして勝利を求めて、全てのボクサーが日々、闘っているのですから。
さて、配信開始の第一試合は、こちらも通常興行のメインとしては組めないレベルのカード。
確か細野悟が出た試合以来ですかね、IBFのフェザー級イリミネーションバウトが国内で組まれました。
元IBF二階級王者、というより、長谷川穂積戦の勝利で記憶されるスペインの燃える闘魂、キコ・マルチネスに、日本王座を返上した自称天才、阿部麗也が「挑む」一戦。
サウスポーの阿部がフットワークと速いパンチでリード。
2回、マルチネスの左アッパーが入ってぐらついた阿部、しかししっかりクリンチ出来ている。
マルチネス、打つとき左足が浮いていて、しっかり踏ん張って打ったパンチではなかった。ダメージはさほどないか。
阿部、予想外のパンチを食ったが、すぐ立て直す。
低い姿勢で来るマルチネスだが、阿部は速いコンビネーション。左アッパーを織り込んで、上下の打ち分け。
手数が出る上に、ナックルの面を正確に当ててもいる。この辺は単に速いだけではない、阿部の非凡。
5、6回とヒットが続き、6回には左アッパー、ぐらつくマルチネスをロープに追って攻め立てる。
劣勢のマルチネス、7回ゴング後に右ボディを打ち込む。阿部、顔を歪めたが、終盤に影響はなし。
9回、阿部の左カウンターで二度、マルチネス止まる。しかし倒れない。単発ながら重い右を繰り出す。
阿部、終盤は足使って左カウンター。セーフティーに闘い終え、大差の勝利でした。
阿部麗也、かつて二度の日本タイトル挑戦失敗(1分1敗)があったときは、この先厳しいかと思ったものですが...話は違えど佐々木尽同様、諦めずに闘い続け、ここまで再浮上、という以上の高みに辿り着いた、と言って良いでしょう。
国内最強はまず証明していますし、IBFの挑戦権も勝ち取った。あとはもうひとつ上の勝利を勝ち取るのみ、です。
IBF王者ルイス・アルベルト・ロペスは、英国の人気選手マイケル・コンラン戦が決まっていますが、この勝者が次、阿部との対戦になるはずです。
問題は日本に持ってこれるか、ですが...マッチルームの興行で、英国にお出かけとなるより、当然日本でやれたら勝機は増すでしょう。
コンランが勝てば難しそうですが、ロペスが勝てば可能性はある?のでしょうか。
カードとしては、これまた普通の興行では難しく、AmazonPrime配信興行だったら良いなあ、と思いますが...あるとしても年末くらいでしょうかね。