まさかの体格差克服で「質」の差が出た クロフォード、カネロ攻略で5階級制覇

 

 

そういうことで今頃何を、という感想文ですが、カネロ・アルバレスvsテレンス・クロフォード戦、簡単に。


一応、ライブで映像は見ました。当日お昼前、名古屋入りして所用を済ませ、友人たちと合流して、カフェをハシゴして、手持ちのタブレットNETFLIXライブ配信を見ていたようなことです。
もっとも途中、移動したので7回はしっかり見られませんでしたが。

この時見たのと、自宅に帰ってから大画面で見直したのと、印象はほぼ変わりませんでした。
試合前から喧伝されていたクロフォードの肉体改造による体格差克服が成功し、そうなればあとはボクサーとしての技術、その質の比較になる。
そして、その部分でクロフォードが、クリアに差を付けて勝った、という試合でした。

初回からカネロが右ロングで叩きにかかる。ベタといえばそうですが、常套手段でもあり。
しかしクロフォード、落ち着き払ってジャブから左、右返しをヒット。
2回、カネロ今度は右ボディストレート。クロフォードまたも平然とジャブ、ジャブ、左から右とコンビを当て返す。


このクロフォードの落ち着きを見て、この試合、カネロにとり、容易ならざるものになる、と思いました。
自分だけ相手を俯瞰して見て、それを基準に試合を運ぶ、という風情がクロフォードの強味である、と思うのですが、そういう構えで立たれては、なかなかクロフォードの陣を崩せるものではない、と。


4回になると、単発のカネロに、クロフォードが常に倍、さらにオマケもあり、というリターンのヒットを重ねる。
スパーリングで格上が格下にレッスンを施す、というような絵。
クロフォードはジャブから入るパターンだったが、それに加えて左をダイレクトで当て始める。真っ直ぐ最短距離、と思えば外巻きのダブルも。

5回、カネロ無理に出てもつれ、クロフォードをリフト。あまり意味は無いが、場内沸く。
6回、カネロの出鼻に、クロフォードが「ジャブ」の左カウンター。後ろ手のパンチだが、本当に合わせるだけ。しかしタイミング抜群、効果十分。
7、8回あたりになると、カネロ、単発ヒットすら少なくなる。クロフォードのパンチが、コンスタントにヒット。

9回、クロフォード足止めて、アッパーを織り込んだコンビで迎撃。上下左右と打ちまくる。
振りの小さい左のダブル、ジャブとフックを組み合わせた技も。打ち勝っておいてまた足捌き。カネロ無理に出てバッティング。
10回、クロフォード、コンビの締めに右ボディフックを置く。カネロ、心身の疲弊が顔に出ている。

11回、カネロ奮起して、右クロスと左アッパーで攻めるが、カネロもボディブローを織り込んだコンビ。ペース落ちない。
クロフォードのジャブを食ったカネロが、一瞬目線を外す。最後の頑張りも、ここで少し、気持ちが削がれたか。
最終回、クロフォード軽快、当てるだけ当てて足で捌く。最後は左を続けてヒット。


判定は、やっぱりカネロに甘めでしたが、さりとてこの内容で逆やるわけいかん、という感じでした。
ざっと見て、10対2くらいの試合かと見ましたが。


試合前の想像としては、カネロが体格差を利してクロフォードを押し切るだろう、と思っていました。
しかし今のカネロに、さほど質の高い攻防も期待出来ないだろうから、大層なイベントのわりには...という、近年よくあるパターンで終わるのだろうなあ、と。

しかし、クロフォードのコンディションが、想像を超えて良好でした。
元々ライト級スタートの選手とは思えない。スーパーミドルのカネロ相手に引けを取らない仕上がりに、ただただ驚くばかり。
しかも当たり負けしないのみならず、終盤でも軽快な足捌きを見せる。ペース配分が上手いとはいえ...。

こちらは勝手に、巨額の報酬を求めて、勝算度外視の試合を追い求めるクロフォード、という見方をしていて、残念がったり、悲しく思ったりしていたわけですが、彼は本気で勝ちに行ったし、その腹づもりで、当初から事に当たっていたのだ、という証明をしました。
今となってはただ、不明を恥じ、脱帽するのみです。技巧派の誇りが、7万人を超えたという大観衆の前で、ギラリと光った一戦でした。


敗れたカネロの方ですが、前回のウィリアム・スクル戦で、試合内容どうより、一見して身体付きが小さく...それこそ、萎んで見えた印象がありました。
今回も同様で、一時はライトヘビーに進出した選手だというのに、クロフォードと対して、大きく見えなかった。
どうやら、ここに来て、その肉体を仕上げてきたメキシカンビーフの効能、その貯金が尽きてきた、ということかもしれません。
フロイド・メイウェザー戦の完敗を経て、防御から攻撃への切り換えを中心に、技術面で非常に伸びた選手で、大抵の相手にパワーだけでなく、巧さでも勝てる選手でしたが、やはりクロフォードは別格だった。質の差が、全て試合内容に出ていました。 

 

 

自宅のTVでNETFLIXを見直すと、改めて会場の大きさ、イベントの大規模さに目を奪われた試合でもありました。
リングサイドには有名人がずらり。ラウンド間や試合の合間には、おそらくプログラムとして計算の内に入っているのだろう、というくらい、次から次へと画面に映されていく。
おそらく会場に来た、こうした「セレブ」ってんですか、有名人たちには、来場することへの謝礼が出ているのでしょう。
従来のボクシングのビッグマッチと比べても、明らかに人数が多いし、「格」も相当な顔ぶればかりでした。

入場演出はちらっとだけ見て飛ばしましたが、ロックバンドの演奏と、マリアッチの生演奏は大々的でしたし、演出はサウジ関連や英国のスタジアムイベント同様、壮大なものでした。
何しろお金あるんやなー、という感じで、色々鼻白むところでもあったのですが、この日に関しては、テレンス・クロフォードの見事なボクシング、この一戦に賭ける情熱が、ボクサーの純真を最大限に表しているように感じられもしました。
見終えた感想としては、思った以上に爽快な気持ちになれて、実に良いものでした。

 

アンダーは色々あったようですが、現時点では堤麗斗の試合以外、チェック出来ていません。
初回早々、左アッパーから攻め込んで、断続的に打ち続け、最後は左のクロスが頭部にヒットして倒し、そのままストップ。
相手どうというのはともかく、デビュー戦から比べると、動きに迷いがなくなってきているように感じました。
次は12月27日ですが、当面はこの感じで連勝街道を走ることでしょう。徐々に段階を上げていく過程に入っていくことでしょうし、この先楽しみです。