地位の確立へ、まずは一歩前進 藤田炎村、TKOで初防衛




あの華々しい4大日本タイトルマッチの興行で戴冠し、今回はダイヤモンドグローブ三迫枠でメイン、という藤田炎村の初防衛戦、昨夜FODプレミアムでライブ配信されました。
地味な印象に終わる事も多い奇数月と違い、今回はダブルタイトルマッチ他、けっこう充実のカード。簡単に感想を。


藤田炎村は、激戦上等タイプ(そんなタイプあるのか)の大野俊人の間合いを巧みに外しつつ攻めていく。
ジャブは互いに良いが、大野のジャブ、若干戻りが遅いか。そこに藤田は右クロスカウンター、続いて右の追い打ち。
ワンツー、フックを当て、攻防が途切れたかというタイミングでまた打てる藤田が先制する。

2回、パンチの切れ自体は悪くない大野に対し、藤田は右フックを決めて効かせたあと、スイッチして左ボディアッパー、右フックという、お馴染みのパターンもちょっとだけ。
好機に逸らずこういう仕掛け、駆け引き、押し引きが出来る藤田、良い意味で狡猾なところがある。


3回、大野ジャブからワンツー、ストレートパンチの距離で組み立て直そうとするが、ダメージが見える。
藤田、2分くらい見ていた?が、ワンツー、振りの小さい右クロスで効かせ、左右フックで追撃。大野ダウン。
再開すると、ここで藤田、スイッチして詰める。大野、バランスを維持できない状態。
さらなるクリーンヒットが連なる前に、レフェリーが止めました。

大野、若干不満そうでしたが、仕方ないところ。あれ以上続いていたら危なかったと思います。
試合後は藤田の勝利を祝福していました。


どのクラスでもある現象ですが、今のところ藤田も、日本王者の上に位置づけられる選手がいるスーパーライト級において、日本のナンバーワンとは目されるところには、あと一歩届いていない王者ではあります。
しかし上位の挑戦者を隙の無い闘いで仕留めて初防衛、その地位を確立するための闘いに一歩前進した、と言えるでしょう。

戦績から強打のイメージですが、むしろパワーの面では限界もあるのでは、と感じたりします。
しかし、それを補う巧みな試合運びと、高い集中に支えられた果敢さを併せ持つ、魅力のあるファイターです。今後の試合が楽しみですね。




ダブルタイトルのもうひとつは、日本スーパーウェルター級、正規王者と暫定王者の対戦。
歴戦の大ベテラン出田裕一は、中島玲が要所で決める速いパンチをクリーンヒットされ、前半5回まではフルマークか4対1が妥当、という内容。
しかし一人だけ、3対2で逆がいまして、ちょっと驚き。

とはいえ、ふたりの支持があれば勝てるわけだから、逆はほっといて後半、互角に終えれば良い。
しかし出田が徐々に手数を増してきて、終盤は場内の声援にも乗って、要所では歓声が上がる右のヒットもあり。
最終回などは、中島が出田のペースに巻き込まれてしまっていて、クリアに抑えられた感じ。

中島、出田の手が止まらないなら、ある程度やらせておいて急襲するとか、印象的な場面を後半にあとひとつかふたつ作れていたら、と思うところ。
なまじ一発きついのもらって危ない、ということではないのが、却って悪く作用した?

それでも判定は中島かな、と思っていたんですが、全員6対4のスプリットで、出田の逆転判定勝ち。
映像で見た「映え」と、リングサイドで見た印象は違うということか。うーん、という試合でした。

ただ、試合後の出田のインタビューにおける、出田の声色は実にクールで、客観的に試合を振り返る余裕がありました。
このあたりが、際どい勝利を手にできた一因なのかもしれません。




スーパーライト級ホープ、渡来美響は、11勝無敗3分、KOゼロのライト級という、中国人サウスポーのウ・ジウに8回判定勝ち。
緩急付けて打ってくるパンチには、意外に鋭さがあり、いい加減な構えでいたら渡来も打たれていたかもしれません。
しかし渡来、いつものトリッキーな構えからくる印象とは違って、高い警戒心をもって外し、攻め口もいくつか工夫が見える。
少なくとも、下手なことして足元を掬われるようなことはなし。
互いに決定打がなく、判定も競っていた印象でしたが、渡来が3-0で勝利でした。

この試合を、派手なスタイルで闘っていても、この程度の、普通の技量がある相手だと思うに任せないのだから、大したことはない、と見るか。
それともキャリアの浅い若手にしては、試合数も倍以上の巧い選手に、大きな粗を見せることなく闘えた、と見るか。
言えることは、渡来美響も、少ない試合数でいずれ、厳しい勝負をするのだろうから、それまでに積んでおく経験としては、悪くない試合ではあった、ということでしょう。



アンダーでは「ワジマゴ」磯谷大心がスプリットで敗れました。
緑ジムのサウスポー、上村健太に3回、左でダウンを奪われ、その分だけ負けた、という判定でした。
あまり器用ではないが、ボディブローの好打で追い上げていただけに、惜敗でした。
とはいえ、これで3連敗だそうです。なかなか厳しいものですね。



場内の入りは、藤田炎村や出田裕一応援の観客に、関西から来た中島応援団も加わってか、入りもまずまず、場内も盛り上がっていたように感じました。
それでも満員とはいかなかったみたいですが、やっぱりこのくらいでないとねー、というラインには来ていたように思いますね。