減量苦?選択ミス?それとも 拳四朗、元王者カニサレスとダウン応酬



ということで会場には行けず、AmazonPrimeVideoの配信、楽しく見ておりました。
しかしメインは、楽しく、というだけでなく、ちょっとひやひやしながら、というところでありました。
簡単に感想です。


寺地拳四朗は、精悍な表情から気合いが伝わるものの、反面、ちょっと力入りすぎかとも見えるカルロス・カニサレス相手に、左から当てて行くが、右クロス二発ヒットされる。初回、カニサレス
カニサレスの右は、そんなにスピードある感じではなく、拳四朗が左突いて外せば大丈夫かな、と見えたのだが。

2回も割と打ち合う風の拳四朗カニサレスが攻めていたが、拳四朗の右カウンターが頭部に入り、カニサレス一瞬止まったあと、拳四朗の足にしがみつこうとして崩れる。ダウン。

カニサレス立って続行。かなりのダメージと見えた。とはいえまだ序盤。
拳四朗、ひと叩きしてから捌くかと思ったのだが、ボディブローなど含め、3回にはもう「詰め」に出た感じ。
まるで「倒し屋」でもあるかのような選択。
しかしカニサレスに左を当てられ、悪いタイミングでもまだ行く。挙げ句、右カウンター取られて逆にダウン。


この一連の展開には、いったい何をやっているんだろう、人もあろうに寺地拳四朗が...と、唖然となりました。
何をそんなに急いているんだろう。確かに最近倒す試合ばかりで、本人も陣営も妙に攻撃シフトの発言が増えているとはいえ、まだ相手の体力が残っている序盤から、こんな闘い方をして...。


しかし4回、拳四朗は激しいラリーの中、ボディブローを効かせてカニサレス後退させる。
5回もボディ攻撃でリード。しかしラスト10秒くらい、カニサレス猛攻。ヒットも僅かだがあったか。

6回から8回までも、拳四朗がボディ攻撃を決める。しかし足を使わず、捌かず、打ち込みに行くぶん、カニサレスに打たれる。
確かにボディ攻撃が効いて、カニサレスが自ら下がる場面はあった。
しかし、拳四朗は、これだけ目先を変えずに同じ事を続ける攻め方で、相手を倒しきれる「重戦車」ではない。
カニサレスにしたら、遠目からジャブを突かれて引き離され、焦って出たところを上下ともに打たれる方が、余程辛いはずだが、何しろ同じ事を繰り返し「来て」くれるので、言えば頑張りようがある展開でもあった。
8回、拳四朗のチェックフックが外され、カニサレスが攻める場面など、典型的でした。


そして、この選択を継続して迎えた二度目の途中採点、76-74×2、75-75の2-0、僅差で拳四朗リードと出る。
拳四朗から見ると、残り3回4回のうち、二つ取れば2-0で勝利。一つしか取れなくても最悪、0-1のマジョリティドローで防衛。
しかしこの数字を聞いて、9回からカニサレスがさらに攻勢を強める。

ボディのダメージを溜め込み、強振を続けるカニサレス疲労も見えて、開始ゴングが鳴っても立つのが遅い。
しかし9回、10回と打ち合いでカニサレスがまさる。右クロス、左ダブルからコンビネーション。拳四朗打ち負けている。


確かにカニサレスは力があるし、闘志も充分。しかし同時に、ここまで頑張らせてしまった拳四朗及び陣営の「選択ミス」ではないのか、という思いが消えない。
11回、ここに来てようやく、左ジャブとフットワークを生かした「シフト」に変わる。しかし捌けているかどうが、見方一つ、という3分。
12回は若干、捌けたかな、という印象は残ったが。

判定は2-0で拳四朗。ジャッジは9~12回のうち、二つを拳四朗に与えたということか。
まさに薄氷を踏む防衛となりました。



確かにカルロス・カニサレスは健闘したと思います。元王者、現1位というだけあって、実力を見せた試合でした。
しかし同時に、なんでこんな試合になったかな、という印象でもありました。

上記の通り、最初からスペクタクルなKO劇を求めるような試合ぶりで、ダウンを奪ったとはいえ、序盤だったし、相手が完全に死に体だったというでもなかった。
にもかかわらず、早々に詰めに行って、逆に倒される。
その後ボディ攻撃を効かせたのはさすがでしたが、そこから攻め込んで倒そうとし過ぎ、攻め口が単調になって、相手の頑張りを引き出してしまった。
これだけ相手に頑張られたあと、倒そうといっても簡単では無い。離れて空回りさせ、左当てて得点し、要所で強く叩く、という選択が、何故切り捨てられていたのか。
ラスト二つ、捌くシフトに戻したときは「今更これをやって、果たして間に合うのか」と心配でなりませんでした。結果「間に合った」採点が出ましたが。
例えば、渡辺二郎パヤオとの再戦で見せた冷徹さが、今回の拳四朗には欠けていました。


試合後、村田諒太がその辺りを含め「減量苦ではないか」と語っていましたが、確かにそうかもしれない、と思います。
これだけのキャリアを重ねて、倒す自信もついた王者がその通りにダウンを奪って、でも忙しない試合運びに自ら首を突っ込んでいく。
その背後に減量苦がある、というのは、なるほどいかにもありそうな話です。

ただ、繰り返しますが最近の本人や陣営のコメントには、違和感を強く覚えることも確かです。
やれファンの期待だ、感動だ、評価上昇だを意識して、少々打たれても良いから倒しにいく...以前なら、寺地拳四朗のどこ押しゃそんな台詞が出てくるのやろう、と思ったような言葉が、普通にポンポン出ています。
まあ、本人は闘志でモノを言う(これまた、らしくないにも程がありますが)のだから仕方ないにしても、トレーナーまでそれを是認、というか丸呑みしているような感じで...それは如何なものか、と思います。
その辺の違和感が、今回の試合にはしなくも、全部出たのかな、という。そんな試合に見えました。


そして、単に減量のみならず、やはり寺地拳四朗といえど、歴戦の疲弊からは逃れられない、という「時」の訪れを見たのかな、と思いもしました。
もしそうだとしたら、本人が希望するというジェシー・ロドリゲス戦についても、早急に実現せねばならないのかもしれない、と。
もっとも、この試合を見たあとでは、フライ級に上げてコンディションの向上が見込めるものか、等々、色々と確信が持てなくなってしまいましたが。
単に本人や陣営が闘い方を省みて、原点に立ち戻ってくれれば...という話で済むものかどうか。答えは今後の試合に持ち越し、ですね。