王座転落ではなく「挑戦」としての健闘 村田諒太、技巧派ブラントに判定負け
ということでDAZN独占生中継、お昼前から見ておりました。
簡単に経過から。
場内は5千人規模ということで、小さなホテルの会場とかよりは、雰囲気あり。
けっこう盛況ぽく見えました。中には和装の女性もちらほら。ほんまかいな、って感じもしますが。
両者、若干の緊張が見える。
ブラントは平静を装い、村田は笑顔、ずっと歯が見える表情なれど、共に硬い。
初回、ブラントがジャブ、右、返しの左と矢継ぎ早に繰り出し、先制。
村田に都合の良い、スローテンポの展開を忌避する意図がありあり。
村田はっきりと立ち後れ、単発の右を返すも、打たれっぱなし。ブラント。
2回、同様の展開。村田左右の瞼がもう赤い。小さいながら切れている模様。
散発的にボディを打つが、手数、ヒットともブラント。
ガード主体の村田の防御を、スピードある軽打でブラントが完全に攻略している。
3回、村田ジャブを外せないが、ボディから攻める。ブラント少し止まり気味に。
右が再三出て、浅いながらヒットも。精度は欠けるが手数が出る。やや村田か。
4回、ブラント左ジャブ突く。村田外せず、防げず。右、左ボディで攻める。
ブラント、立ち上がりより足が止まり気味。攻勢は村田、手数ヒットでブラント。ブラントか。
5回、ジャブの応酬、互角。村田ワンツーを繰り返し、攻める。
右ダイレクトで追撃、ブラント効いたか、続けて打たれる。
村田さらに攻勢、左ジャブボディから右ストレート上のワンツー決まる。村田の回。
この辺りまでは、立ち上がりから飛ばしたブラントを、村田のボディ攻撃で止め、
どこかで捉えられるかも、という希望も消えてはいませんでした。
しかしこの後、ブラントが懸命に流れを変え、というか戻し、立て直していきます。
6回、ブラント、動いて当てる流れに徹する。村田追撃を外された感。ややブラント?
7回、ブラント、明らかに攻めるよりも捌く方にシフト。村田の右でロープを背負う。村田か。
8回、村田ダックで外し前に。右クロス当てるが、ブラントは一発来たら三発返す。ブラント。
9回、ブラントは捌く流れでスピードが出てくる。序盤の攻めの速さではなく、外して動く速さ。
村田はジャブを出せず、右から。ブラントの三連打、返しの真っ直ぐな左で村田のアゴが上がる。
村田少し効いたか。右足を気にする仕草。それでも右を当て、盛り返す。全体を見てブラント。
10回、ブラント前半休み、村田が手数でも上回る。左でブラントの頭を抑え、レフェリーが注意。
後半、ブラントがストレートパンチの連打を重ねる。ブラント。
11回、ブラントの左ジャブ。手数が戻る。村田は右ヒットも単発。
ブラントのリターンを数発もらい、相殺される繰り返し。ブラントの連打、右ダイレクトも。ブラント。
12回、村田奮起して右。しかしブラントの三連打、左でまた顔が跳ね上がる。
村田なおも右相打ち気味に決める。ブラント効いたか、少し止まるが、村田ギアを上げて追撃出来ない。
疲労、ダメージ抱え、懸命に攻めるが、どうしても間が空き、ブラント回復。右でまた村田のアゴが上がる。
甘いですが、この回は村田に。
判定は大差の3-0。私の採点は村田にやや甘く、8対4でした。
=========================================
日本人のミドル級ボクサーとしては、竹原慎二のウィリアム・ジョッピー戦、
石田順裕の一連の試合と並ぶ、或いは次ぐ闘いに臨んだ村田諒太でしたが、残念な結果となりました。
立ち上がり、これまでの相手なら「堅牢」で通った村田の、ガード主体の防御を、
速いジャブと、スリーパンチを真っ直ぐな左で締めるロブ・ブラントに打ち崩されていましたし、
序盤はスピード、リズム、テンポを上げて攻め、後半からは捌く流れにシフトした、
ブラントの試合運びの巧さの前に、大差の判定も仕方なし、と見えました。
ロブ・ブラントは、スーパーミドルの試合で黒星を喫していたものの、ミドル級としては
十分な体格で、なおかつあれだけ動けて手数が出て、巧さもあり、
ミドル級世界上位の、アメリカ黒人選手の実力水準を持っていました。
加えて、ブラントは村田の持つ特性...攻防共に大きく移動するスピードには欠け、
防御はガード主体で動きがなく、前に出る圧力があり、右は強打を秘めるが、
射程範囲を外せば手数が減る、といった部分を綿密に研究して、ファイトプランを練り、実行してきました。
もっとひ弱で脆い相手ならば違ったでしょうが、この相手に、村田が敗れること自体は、
仕方の無いことだ、と言わざるを得ない。そう思わされた内容でもありました。
しかし、ラスベガスのリングで、ミドル級の世界ランカー、それもアメリカの上位選手相手に挑む、
上記したとおり、石田順裕と同様の「挑戦」でしたが、敗れたとはいえ、健闘でもあった、と思います。
5回や最終回などは、さらなる攻めの上積みがあれば、あわや、という可能性も感じましたし。
ただ、これが普通のボクサー、ランカーとしての敗戦なら、この経験を糧に、という期待でもって、
今後のことも語れようというものですが、以前コメント欄で「関脇」と評された方がおられたとおり、
上を目指す過程にいる者を、それこそ綱張っているかのように扱い...というか、
実際その肩書きを持って(しまって)いる(いた、ですね)村田諒太の周辺にまとわりついた
「余計」の数々を思うと、なんだか気が滅入ってしまうのも確かです。
はっきりしているのは、今日の試合は「まさか」でもなく、期待外れでもない敗戦だった、ということです。
あれこれつべこべ言うまでもありません。試合内容を見れば、一目瞭然です。
そして、それを批判的に語る気持ちも、私にはありません。
村田諒太は、自分の良さ、強さをかなりの部分、封じられて、限界も抱えつつ、懸命に闘っていました。
日本人のミドル級ボクサーとして、史上有数の実力者とて、世界のミドル級上位に位置する技巧派に及ばなかった。
その現実を見せられ、悔しく、残念に思いこそすれ...というのが、試合後の率直な感想です。