長所も短所もはっきり見える、若きタイトルコレクター ケネス・ラバー、デカナルド闘凜生戦は12月15日



色々盛り沢山で楽しみ、といえばクリスマスイブ、有明のみならず、12月15日の住吉スポーツセンターも同様です。
IBFバンタム級タイトルマッチ、西田凌佑vsアヌチャイ・ドーンスアをメインに、アンダーにタノンサックvs谷口将隆、竹迫司登vs国本陸再戦などがある上に、もうひとつ、OPBFバンタム級暫定王座決定戦が入りました。

デカナルド闘凜生と闘う相手、ケネース・ラバーについて、昨日の記事では、実況は「ケネス・ロベール」と発音していると書きましたが、リングアナは「ケネス・ヨベール」と言っているようにも聞こえます。
Kenneth Llover という綴りは、そう発音するのでしょうか。その代わり?に、ニックネームは「ラバーボーイ」というらしいですが。


で、YouTube動画で4試合、二日かけて見て見ました。
まず2023年1月21日、ベニー・カネテ戦。この時点で双方、7勝無敗同士。
フィリピンPBF版、バンタム級タイトルマッチ。動画はフルラウンドです。
白と青のトランクスがラバー、赤がカネテです。



サウスポー同士の対戦で、カネテの積極性に終始押され気味。打ち返すパンチもいまひとつ精度に欠ける。
対サウスポーが苦手なのか、それともカネテとの相性か。微妙か劣勢か、というラウンドが連なる。
コレ取った、と見えるのは8回くらいか。最終回も競り勝ったとは言える?何しろ微妙な判定で、6対4が二者、8対2が一者の3-0。
敗れたカネテは膝をついて嘆きの表情。この試合の限りで言えば、ラバーは全然良い選手に見えない。




2023年7月29日、ジェームス・パガリング戦。パガリング、この時点で8勝5KO無敗。
フィリピンGAB版のユース、バンタム級王座決定戦。ハイライト動画です。
白と黄緑のトランクスがラバー。青がパガリングです。




右構えのパガリングに対し、自信満々に左から打ち込んで行く。右リードも肩入れて打つ。
初回、パガリングが少し見て立ったか。ラバーにとっては左を伸ばす間合いが取れる。そのせいか、伸び伸びと動いて打っている。
2回はパガリングが圧して出て、ラバー、ロープを背負う。パガリングの右は威力ありそう。際どく外す。
ガリングの出るところに、オープン気味だが右フック引っかけ。3回はパガリングの右ストレートを食い、後退して外す。
4回、ラバーのワンツー、直後に足が引っかかりパガリング、バランス崩す。そこへラバーの左追い打ち。これが効いたか?
しばし後、ラバー右で探って左を叩きつけると、パガリング後頭部をキャンバスに打つダウン。強烈ワンパンチKO。パガリング、担架に乗って退場。
カネテ戦とは別人のような出来に驚く。甘さもあるが確かに好素材、と見える試合。



続いて2023年11月5日、エドワード・ヘノ戦。WBCアジアコンチネンタル、バンタム級王座決定戦。12回戦。
ヘノはライトフライ級でエルウィン・ソトに挑み、スーパーフライ級でも世界上位にいたサウスポー。
ラバーにとってはベテラン相手のテストマッチという試合か。動画はこれもハイライトです。
青と黄緑のトランクスがラバー、白黒がヘノです。





サウスポー対決だが、カネテ戦ほどのやりにくさはない模様。右リードでヘノのガードの真ん中を通し、左へ繋げる。
会場はラバーの地元らしく、ジャブ一発当てようものなら悲鳴混じりの歓声が。
対照的に、序盤の内は特に、ヘノが攻めても特に何も、という感じで静かなもの。両者もつれた姿勢で、死角からヘノが打つと場内から非難の声。

5回、ラバー左アッパーから攻勢。ヘノ攻め返すがまた左を食い後退。場内大歓声。
6回、ヘノが執拗に出てロープに詰め、ボディ攻撃。両者手を下げ見合い、挑発も。ラバーの速い左フックが決まり、また大歓声。
9回、ラバーが遠目から左ヒット。間合いを制しているかに見えたが10回、ヘノがまたボディ攻撃。
ラバー、ロープを背負い苦しい展開も、最終12回、ワンツーで逆にヘノをロープにもたれさせ、速いパンチ繰り出して終了。
判定は8対4で揃って3-0、ラバー。初の12ラウンズを乗り切った、貴重な経験と言えそうな試合。



直近の試合が今年、8月24日ですから、少し空きました。
相手は中国のヤン・チェンチェン。WBOアジアパシフィック、ユースのバンタム級王座決定戦。10回戦。
ヤンは昨年12月、帝拳の小川寛樹をKOしたファイター。タフで強振してくる闘いぶりが印象的。
こちらも動画はハイライト。赤のグローブがラバー、黒グローブがヤンです。





初回からラバーがスピードに乗ってコンビネーションをヒット。2回には左ボディブローから攻撃。ヤンの強振は足と上体を動かして外す。
ヤンは執拗に出て右を強振。ラバー、ロープに追われるが、4回、左アッパーヒットして逆襲。左右連打で攻め返し、ヤンをロープに追い詰めて猛攻。ヤン耐え抜く。

5回、ヤンはダメージを負ったかと思いきや、右ストレートから連打でまた攻め込んで来る。ラバー、ロープ際で止まって迎えてしまう癖がある。
サウスポーだが、右フック引っかけて回るというベタな技がない模様。攻められて苦しみ、次の6回、案の定?ラバーのグローブ、テープ剥がれる。
最初、左だけかと思ったら右も剥がれる。芸が細かい。当然、そちらも巻き直す。長めの間。いかにもタコにも、という。

終盤9回、ロープ際でラバー、右へ逃げながら左ヒット。ヤン止まる。追撃するがヤンも踏ん張る。最終回も攻められるが左ショートアッパーか、ヒットして脱出。
判定は三者とも6対4でラバーを支持。ヤンの健闘も光る熱戦でした。



ケネース・ラバー、或いはケネス・ロベールかヨベールか、ひょっとしたら試合までに表記が変わる可能性もありますが、それはおいといて、全体的な印象は、好素材ながら未完成、手が回っていない部分も残る若手サウスポー、というところです。

攻撃面では光るもの多々あり。左右共に、少し間合いが取れる位置からだと、速いパンチが打てる。
しかし防御はというと、ガードは締めた構えだが、相手が打ってくるのを足で捌くとき、顔からはっきり手が離れ、しかも上体を反らしたまま動く。
外して即座に反撃、という体勢を取れるほどの、ずば抜けた才能、とまでは言えないか。

あと、見た試合の限りでは、判で押したように相手がボディ狙いで攻めてきて、それへの対応が良くない場面が多い。
ロープ際で止まってしまい、しかもサイドに回って脱出しない。両足が揃っていたり、悪くすると腰が落ちていたり。「受け」に拙いところが多々ある。

反面、劣勢だったり疲弊しているように見えても、カウンターの一撃をしっかり狙って決めたりと、勝負強いところがある。
ひとたび優勢に回ると、攻撃は多彩。一打必倒という強打者ではないようだが、パガリング戦のようなKOも決めている。



デカナルド闘凜生がいかに闘い攻略すべきか、というと、やはり体格差を利して、好きに打てる間合いを与えずに、上手く攻め続ける展開を作れたら、というところでしょうか。
相手にパンチを伸ばす間合いを与えたら、多彩で精度もある攻撃が来る。それがない時間帯を長く作り、好きに出来ないラウンドを重ねたい。
攻め込みつつ、倒そうと焦らずにポイント計算をして闘えたら、矛盾するようですが、逆に倒すチャンスも生まれ、勝機は見えてくるでしょう。
もっとも、ロープ際からも時折、相手の読みを外す一発が出るので、要注意ですが。
現時点では、スピードあるし攻撃センスを感じる若手ですが、試合展開には無理を感じるところも残っているので、そこを見て、上手く攻め込んでほしいと思います。