日曜日、名古屋決戦の感想続きです。
毎度の通り、長丁場の大イベントでしたが、事情あって、会場入りしたのは、最後の三試合の前でした。
アンダー4試合は後に配信で見ました。とりあえずそのセミとセミセミの感想です。簡潔に。
WBOバンタム級タイトルマッチ、武居由樹vsクリスチャン・メディナは、武居の苦戦、敗戦もあり得るか、と思わなかったではありません。
ただ、ここまで何もかも悪いことだらけの完敗になるとは、さすがに想像していませんでした。
初回、立ち上がってすぐ、武居の立つ位置がメディナに近い、と感じました。いつもより近いところに、メディナに立たれている。
それがメディナの、特別な意図を持った位置取り、鋭い踏み込みではなく、武居の動きが乏しいことに原因がある、とも。
この間合いでは、腕を使った防御...世に言うガードやブロックの技術において、精度、強度で確実にメディナがまさる。
構えからして低く、高く上げたところでガードの強さからして違う。この間合いでパンチを交換したら、十中八九、メディナが打ち勝つ。
「そこ」でやり合わずに済ませるための距離の確保が、今日の武居には出来ないのだろうか。だとしたら...。
そんなことを思っているうちにメディナが攻め始め、案の定、ヒット・アンド・カバーの攻防で、いずれもメディナがまさっていく。
武居は甘いガードを狙われて打たれ、メディナの肩で担いで身体ごとぶつけるような右フックをまともにもらい、ダウンしました。
正直、よく立てたなあ、と後から思うほど「まとも」でした。
武居なんとかゴングまで凌ぐも、2回3回と劣勢続き。
打たれるのはもちろん良くないが、打たれたあとの対応も悪い。流れを切ろうとせず、クリンチも出来ず、打ち返して効かせることで打開を図る場面が再々。
セコンドは何も言わないのか、と傍目には思うところなれど、闘いの趨勢が早々に決まってしまえば、アドバイスひとつでどうなるものでもない。
まして、キックボクサーの、いや、それ以上に遠い間合いで闘い、長い距離を行ったり来たりして打ち、外し、とやって勝ってきた武居が、その強味の前提を失ってしまっているのですから。
試合は4回、ダメージ溜めた武居にメディナが詰めて、右アッパー6連発か7連発か。
その前からロープに腰が落ちかけ、回り込むこともままならない武居、全部もらって崩れかけ、レフェリーが止めました。
これまでは、極めて偏りのある、しかしそこに並外れた強味を持つボクシングで勝ってきた武居ですが、普通の間合いでの防御、その精度や強度に欠けるという欠落が、完全にさらけ出されてしまった。きついようですが、そういう試合に見えました。
仮に再起するとしても、今から純正のボクサー、それも世界のエリートクラスと伍する防御を、完全に身に付けるというわけにもいかないでしょう。
本来の、普通のボクサーの常識を超えた間合いと、その移動距離をものともしないスピードを生かしつつ、補填していく、という作業をすることになる、と思います。
で、その前提として、やはりコンディションの問題は気になるところでした。
元キックボクサー同士の対戦が、既定路線であるかのように語られ、どうやらウェイトを118で揃えて、という話で進んでいたようですが、武居由樹にとっては...そして、那須川天心にとっても、この数字がベストかどうかは、改めて再考の余地あり、でしょう。
大橋秀行会長は、武居がタイトルを失っても、この対戦に意欲を示したそうですが、まさかこのまま、元々無理して落とした階級で続けさせるというのでしょうかね。
井上尚弥がいるから、スーパーバンタムでは世界タイトルが組めない、というのでしょうが、そんなの、要は「仕方が無い」というだけの話です。
なら、普通の10回戦で組めば済む話でしょう。スター選手同士の箔付けのために、タイトルがあるわけではないんですから。
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松本流星と高田勇仁のWBAミニマム級タイトルマッチは、5回のバッティングによって高田が深いダメージを負い、試合続行不可能。
負傷判定で松本が勝利し、新チャンピオンとなりました。
5回のアクシデントは、一瞬何が起こったのか、会場ではわかりませんでした。
パンチが当たって倒れたタイミングでもないし、頭かと思ったものの、あまりに痛烈だったので。
後にスロー映像を見て、高田がダメージと同時に、あれほど激しく出血していたとは、と驚きました。
担架で退場した高田、後に会場に姿を見せ、無事だという情報が伝わってきて、安堵したようなことです。
試合としては、松本のペースに終始した試合でした。
特に変わったことをやったり、展開を広げたりする前の段で、ベーシックな攻撃を重ねていた松本が優勢でした。
スピードやコンビネーションの鋭さに、秀でたものを見せていた松本にとっても、この決着は残念だったことでしょう。
今後は他のタイトル(直接の「上」王者もいますし)との絡みなどが、当然期待されます。
もし普通の試合、普通のコンテンダーと組むというのなら、それはやっぱり高田との再戦をするべきだろう、と思わざるを得ません。
その辺の成り行きは、まだ先の話でしょうが。
※写真提供は「カメラ専用機で撮り歩き」管理人さんです。
いつもありがとうございます。